東京医科大学病院




平成29年度 開催分

  • 開催報告:平成29年度第3回目 
     「お金と暮らし」

開催日:2017年9月12日(火)
開催場所:当院本館6階第2会議室

日本では20~64歳のいわゆる就労可能年齢の人たちのがん罹患率が高いというデータがあります。通常ならば働き盛りであったり、家族を養ったりという状況なのに、治療のために会社を休む、または会社を辞めるとなると治療費や生活費に直結する問題となってしまいます。そのため、がん治療の継続を断念したり、薬の処方を遅らせたりする患者さんもいるという調査結果もあります。そこで今回はこうした経済的負担の問題を軽減するための主な公的制度を、がん相談窓口の医療ソーシャルワーカーが説明しました。

講師:
小川絢多(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)
川島美由紀(看護師長・がん看護専門看護師)
志賀圭子(保健師・介護支援専門員)



日本の公的制度は原則的に「申請主義」です。患者さんご自身が申請して初めて制度を利用することができます。まずは医療費負担を軽減する方法として「高額療養費制度」があります。申請窓口は健康保険組合や役所の国民健康保険課など各保険者です。医療機関や薬局の窓口で支払った医療費の金額が、月の初めから終わりまでの1カ月間において自己負担限度額を超えた場合に、その超えた金額が保険者から給付されます。自己負担限度額は年齢と所得によって異なります。たとえば、70歳未満で所得が210万円以上600万円未満の人が、肺がん治療に用いられるザーコリという薬を使用するケースでご説明します。
ザーコリは1錠当たり約1万1,700円です。これを1日2錠服用すると、1カ月の医療費総額としては約70万円かかります。医療保険3割負担の場合、1カ月21万円の自己負担がかかるということになります。これを毎月支払い続けることは生活を圧迫しますよね。高額療養費制度を活用すると、70歳未満で所得が210万円以上600万円未満の人の自己負担限度額は8万1,000円+(総医療費-26万7,000円)×0.01ですから、仮に自己負担額が8万5,000円とすると12万5,000円負担が軽くなるわけです。負担を予め軽くするためには、各保険者にて「限度額適用認定証」を取得しておく必要があります。なお、この制度が適用されるのは保険が適用される薬や治療のみで、自由診療の場合は適用されません。

次は「傷病手当金」です。会社勤めの方が病気やけがで療養中のために仕事を休んだことで給料が支給されない時に、被保険者とその家族の生活を保障するための制度です。ここでポイントなのは「3日以上連続して仕事を休んでいる」、「仕事を休んでいる期間に給与が支給されない」ことです。これらの条件が整えば1年6カ月を限度に、給与の3分の2程度が支給されます。会社に勤務している人の場合、有給休暇を取得する権利がありますので、まず有給休暇を利用することになります。


次は「障害年金」です。病気やけがが原因で生活や仕事に障害を来した時、生活を保障するために支給される年金です。申請できるのは原則、初診日から1年6カ月経過した日で、この日を障害認定日といいます(身体状況により例外あり)。認定が受けられる条件として、①公的年金制度が定める1級および2級の障害があること、②初診日の前々月までの加入期間のうち、3分の2以上の期間、保険料を納付していることなどがあります。

がん患者さんの場合、治療の副作用による倦怠感・悪心・嘔吐・下痢貧血・体重減少などの全身衰弱等がある場合、初診日から1年6カ月後に申請の可能性も出てきます。ただし、「がん」ということだけでは年金は支給されません。がんに起因する障害であり、その障害自体に対する生活保障ということが障害年金の基本的な考え方です。申請窓口は自治体の保険年金課や年金事務所です。

もうひとつ、「生活保護」という制度があります。利用できる制度や保障を使っても、生活保護法で規定する最低生活費に満たない場合、受給の対象となります。
以上のような悩みを抱えた方はぜひ、当院医療ソーシャルワーカーへご相談ください。お役に立てるよう一緒に考えたいと思います。また各制度には各々の条件がありますので、医療ソーシャルワーカーや各窓口にお問い合わせください。

お金のために治療ができない、治療のために経済的に追い詰められることのないよう、一緒に考えていきましょう。複雑な仕組みをお一人で調べることは大変根気のいる作業です。頼れる先に頼りながら治療に臨みましょう。




  • 開催報告:平成29年度第2回 
     「がん患者さんのための夏バテ予防の食事」

開催日:2017年7月11日(火)
開催場所:当院本館6階第2会議室

連日の猛暑のため、健常な人でも夏バテになってしまう今の季節、病気療養中のがん患者さんは特に注意を要します。夏バテを防ぐためには、日頃から行っているがん治療のための食事の仕方を、より一層きちんと守ることが大切です。食事を通して患者さんをサポートしている管理栄養士ががん治療のための食事の仕方をご説明しました。

講師:
浦上理絵(管理栄養士)
川島美由紀(看護師長・がん看護専門看護師)
志賀圭子(保健師・介護支援専門員)
小川絢多(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)



がんの治療中には嘔吐や悪心、胃の不快感など様々な副作用が現れます。そうした副作用がある時は、無理に食べようとせずに、気分の良い時に食べられる分を食べましょう。量を腹5~6分目にしてみるのも良い方法です。また、嘔吐や悪心、胃の不快感が悪化するもの(甘いもの、油の多いもの、塩分の多いもの、刺激の強いもの)、消化に悪いものは控えましょう。栄養補助食品を使用するのも良い方法です。

特に食欲不振で体重減少が気になる方は、食べてみたいものや食べられそうなものを食べるようにしましょう。少量で高カロリーのものを使用したり、間食をとってみるのも良いと思います。

夏バテの原因の1つがエネルギー不足です。しかし、食欲不振や副作用で食事が摂れない時は、オイルやマヨネーズなどをいつもより多く使ってみたり、はちみつやジャムなどをできるだけ摂るなど工夫することをお勧めします。また、食事量が少ない方のために、少量の食事で高カロリーに出来る粉状のエネルギー補給食品(カロアップ)もあります。カロリーは砂糖と同じ量で甘みは10分の1ですので、こうしたものを利用する方法もあります。


参加者の方々からも様々なご質問が寄せられました。

Q1. 手術で胃が3分の1になりました。初めての夏を乗り切るために効率の良い栄養の摂り方を教えてください。

A1. 一度にたくさん食べられないので、分割食をお勧めします。いつもの半分量の食事を1日5~6食摂るイメージです。10時、15時、20時などの間食時に栄養補助食品や濃厚流動食を利用するのも良い方法です。

Q2. 免疫力を高める食事や食べ物を教えてください。

A2. 残念ながら食事の特効料理はありません。しかし、免疫力を高める栄養素としては、抗酸化作用のあるビタミンA、ビタミンE、ビタミンC、オメガ-3系脂肪酸などがあります。これらはサバ、サケ、サンマ、マグロなどの魚や、緑黄色野菜、果物などに多く含まれているので、これらの食品をバランス良く摂りましょう。

Q3. 食べない方が良い食べ物、積極的に摂った方が良い食べ物があれば教えてください。

A3. 特定のものを制限すると偏った食事となります。食べすぎもよくありません。また、前述の魚や緑黄色野菜、果物なども、そればかりを食べ続ければ良いということではありません。普段食べる機会の少ない食品であれば、サバやサケは週1回、果物は2日に1回程度メニューに組み込んでみてはいかがでしょうか。

Q4. 添加物について教えてください。

A4. 添加物は摂らないに越したことはありませんが、添加物だけが原因でがんになるわけではありません。日本で使用が許可されている添加物は、長期間摂取し続けても人体に影響はないとされています。


最後に、がん患者さん向けの料理の試食会が行われました。食事に関してのご相談は、入院中は病棟に担当の管理栄養士がいますので、お気軽にお声をおかけください。外来通院中は栄養相談室で栄養相談を行っています。依頼状が必要なので担当医師にご相談ください。




  • 開催報告:平成29年度第1回 
     「乳がんとうまく付き合うために~からだ・こころ・くらし~」

開催日:2017年5月9日(火)
開催場所:当院本館6階第2会議室

乳がんに罹患する人は日本人女性の中では40代の方が最も多く、子育て中であったり仕事でも重要な役割を担っている時期と重なることから、生活と治療を並行して行うことが求められます。がんに囚われるのではなく「自分らしく生きる」ことが大切です。今回は治療中の患者さんが乳がんとうまく付き合うためのポイントを乳がん看護認定看護師がご説明しました。

講師:
三原由希子(乳がん看護認定看護師)
川島美由紀(看護師長・がん看護専門看護師)
志賀圭子(保健師・介護支援専門員)
小川絢多(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)



さまざまながんの種類がある中で、看護認定看護師がいるのは乳がんだけです。理由としては①治療が長期間にわたりたくさんの治療を選択し受けなければならないこと、②予後が長く経過を見る必要があるからです。当院では現在、乳腺科の外来で認定看護師が乳がんの看護相談を行っています。原則的には事前予約が必要ですが、急なご相談でもお応えできる場合がありますので、お気軽にお声をお掛けください。昨年、約100件の看護相談が寄せられました。相談内容としては「告知を受けた後の混乱や不安」、「治療をどのように決めれば良いか」、「乳房喪失をどのように受け止めれば良いか」のほか、さきほど述べたような生活と仕事のこと、また、再発の不安などの相談もメンタルな相談が多いです。

乳がんを告知されると、当然のことながらほとんどの方が動揺し落ち込みます。しかし、2週間ほど経つと気持ちが落ち着き、現実に直面して治療を始める心構えができます。ここで大切なのは「自分で意思決定すること」です。主治医、看護師、ご家族、友人、そしてわれわれ認定看護師などに相談しましょう。納得のいくまで相談し情報を集めて、その中から自分として納得できる選択を“自分で”決定することでがんとともに生きていくための自信が付くことにつながります。また、さまざまな人に相談し情報を集める中で、乳がんの治療や療養生活に関する理解が深まり、自分を取り巻く状況の変化に適切に対処できるようになります。


一方で、看護相談に寄せられるものとしてアピアランス(見た目)に関する相談も多いです。「乳房手術による乳房の喪失・変形」、「化学療法・内分泌療法による脱毛」、「薬物療法による皮膚障害・爪障害」、「放射線療法による皮膚障害」、「手術や化学療法によるむくみ」など治療を行っている過程で生じる見た目の変化への対応は積極的に行いましょう。外出する時、仕事に行く時、人と会う時、自信を持って行動するためには見た目が大切です。それが、「自分のために生きる」ことを支える原動力となります。われわれ認定看護師はそのための相談にもお応えします。

乳房を補整するための人工乳房(シリコン、コットン、ウレタンなど)やブラジャーなどさまざまな種類を様々なメーカーが販売しています。また脱毛についても、髪の毛だけでなく眉毛や睫毛などのケアについてもアドバイスできます。髪の毛についてはウィッグが主体となりますが、なかなか合わないという方がいます。そのためにはウィッグの店で納得のいくまでサイズ合わせと試着を行いましょう。眉毛は抜けてしまう前にメイクの練習をしておきます。睫毛は付け睫毛を使用しても問題ありません。爪の変色はマニキュアで補整しましょう。使用するマニキュアも国内メーカーのものであればホルマリンやトルエンの心配はほとんどありませんので使用してかまいません。

お母さんががんであることを、お子さんにどのように伝えるかということも大切なことです。看護相談ではそうしたアドバイスもさせていただいています。お気軽に乳腺科外来の看護相談においでください。乳がん看護認定看護師が一緒に考え、納得のいくお手伝いをさせていただきます。




問い合わせ先:
東京医科大学病院 総合相談・支援センター
がん相談窓口 医療ソーシャルワーカー 保健師
TEL:03-3342-6111(代表)
※がん患者サロン「とぽす」のチラシの詳細は、PDF形式でご覧になれます。
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