東京医科大学病院




平成27年度 開催分

  • 開催報告:平成27年度第5回 
    「抗がん薬治療と副作用
    ~どうして副作用を起きるのか?~」

開催日:2016年3月8日(火)
開催場所:
当院本館6階第2会議室

抗がん薬を用いた化学療法を受けているがん患者さんにとって、抗がん薬は病気を治療するためには必要なことだけど、やっぱり副作用はつらい、と思われている方が多くいらっしゃると思います。しかし、その抗がん薬はどういう仕組みで副作用が起きるのかということを知っておくことで、副作用に対する心構えができてくるのではないでしょうか。そこで今回は、薬剤師から抗がん薬治療と副作用についてご説明しました。

講師:
宮松洋信(薬剤師)
川島美由紀(看護師長・がん看護専門看護師)
志賀圭子(保健師・介護支援専門員)
鈴木豊(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)

化学療法では「殺細胞薬」「分子標的治療薬」「ホルモン療法薬」の3つが使用されていますが、現在最も多く使われているのは殺細胞薬です。これは積極的にがん細胞を殺していく薬です。一方、分子標的治療薬は、がん細胞が特異的に出している「マーカー」を目印に、がん細胞に薬が集中してがん細胞を殺す薬です。ホルモン療法薬は性ホルモンががん細胞を育てる乳がんや前立腺がんに対して用いる薬です。


殺細胞薬ががん細胞にだけ効果があればいいのですが、同じように正常な細胞にも作用してしまうのが副作用です。しかし、殺細胞薬は全ての細胞に同程度に作用するのではなく、活発に入れ替わる細胞、言い換えれば細胞分裂の盛んな正常細胞により強く作用します。それは髪の毛、口、のど、消化管、皮膚、骨髄などです。脱毛、口内炎であり、消化管に作用すれば悪心(気持ちの悪さ)・嘔吐や下痢、便秘などが起き、骨髄に作用すると白血球、赤血球、好中球、血小板の減少となって現れます。

化学療法を受ける患者さんに「副作用の中で何がいやか」をアンケートすると、常に上位を占めるのが殺細胞薬による悪心・嘔吐です。副作用が現れるのは早く、抗がん薬の点滴を行っている最中に発現する場合も少なくありません。このためにあらかじめ制吐薬を服用しておきます。制吐薬は脳の嘔吐中枢を抑制するための薬で、これにより悪心・嘔吐を軽減します。悪心・嘔吐の場合はすぐに副作用の症状が現れますが、抗がん薬の種類や組合せ、患者さんご自身の事情(年齢、性別、既往歴など)によって副作用が現れる時期や回復するまでの期間は異なります。



非常に言いにくいことですが、化学療法にはある程度の苦痛が伴います。しかし、主治医が化学療法での治療を選択するのは、抗がん薬による治療ががん細胞を叩くのに最も効果が見込める治療と判断するからです。ですから、化学療法をすすめられた場合は、使用する抗がん薬の種類、治療の目的と効果とともに、副作用について事前に主治医から十分な説明を受けましょう。効果と副作用、そして、副作用から出てくる様々な影響(仕事、家族、費用、体調)などを十分に考慮したうえで、化学療法を受けるかどうかの判断を行うことが大切かと思います。

講師からの説明ののち、質疑応答が行われました。患者さんや家族にとって副作用についての関心は高く、白血球など血液の細胞成分、血管の痛み、むくみなどについて盛んに質問が寄せられました。『とぽす』ではこれからも、こうした盛んな質疑応答を通じて出席者の方々同士の情報共有を行っていきたいと思っています。





  • 開催報告:平成27年度第4回 
    「病気の治療と食事のくふう
    ~知っておきたいこと、知りたいこと~」

開催日:2015年11月24日(火)
開催場所:
当院本館6階第2会議室

がん患者さんにとっての「食事」は、エネルギー摂取とともに大切な治療の一環でもあります。そのため、通常よりも細心な食事の工夫が必要です。また、がんの治療中または前後は、治療のために食欲不振や味覚障害などの影響を受けることが少なくありません。そこで今回は、日ごろから食事を通して患者さんの健康状態に心を配っている管理栄養士が食事の工夫のヒントをご説明しました。

講師:
武田知世(管理栄養士)
志賀圭子(保健師・介護支援専門員)
鈴木豊(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)

がんの治療中には様々な食事摂取不良が起こります。食欲がないため、十分な食事量が摂れず、不安を感じることもあると思います。食べられない時は“食べられるときに、食べたいものを、食べたいだけ”食べることも大切です。それぞれの症状に応じた食事の工夫をご紹介します。
●口内炎:
とろみ、なめらかな口当たりのもの(茶碗蒸しやポタージュ)、乳製品(ヨーグルトをのぞく)、料理をマッシュしたもの
●下痢:
経口補水液やスープなど。油っこいものや繊維質の多い野菜、刺激のある料理は一時的に控えましょう。
●食欲不振:
少量頻回食、フルーツ、アイスクリーム、酢飯
●味覚障害:
食べられない味は避ける、牛乳、だし、酸味、亜鉛(欠乏すると味覚低下を起こすと言われています)

食欲がない時には、アイスクリームはカロリーが高いので必要カロリー摂取にはお勧めですし、お酢はさっぱりしているので食欲が湧くという方が多いです。
毎日3回食べることは決して義務ではありません。食べることが苦痛に感じてしまったら、栄養補助食品を取り入れてみたり、医師や栄養士と相談し、栄養摂取ルートを話し合ってみましょう。



最近よく「免疫を高める食事」ということが言われています。がんの治療中、もしくは前後では免疫力が衰えて他の病気に罹ることが多いので、そのリスクを防ぐために食事で免疫力を高めるのは良い方法だと思います。腸は最大の免疫器官と言われており、腸内の環境を整えることで免疫力を高めましょう。お勧めはヨーグルトの摂取で善玉菌を増やすこと。同時に善玉菌の栄養になるオリゴ糖の摂取もお勧めです。また、治療中に発症した炎症を抑制するためにはオメガ-3不飽和脂肪酸を多く含む青魚や、抗酸化物質のセレンを多く含む魚や卵、ビタミンCやEを含む野菜や果物、ビタミンEを含むナッツ類を摂取するのも最近注目されています。



講師からの説明の後、出席者のフリートークが行われました。その中で9カ月前に胃がんで胃を全摘したという男性患者さんがご自身の経験を紹介。「今、抗がん剤の治療中ですが、初めの頃は何も食べられませんでした。でも、食べなければいけない。食べられるものを探した結果、りんごにヨーグルトと蜂蜜の組合せ、そしてお酢のドレッシングを掛けた野菜なら食べられることがわかりました。手術で10kg減った体重が5kg戻りました」とうれしそうに話す姿に対して、出席者から「素晴らしい!」という声と拍手が贈られました。
また、出席者の方々から互いの貴重な経験や話を聞くことはすごく大切な機会であるとの意見もありました。これは、当院のがん患者サロンの目的のひとつでもあり、実りある時間を出席者の方々と共有させていただきました。





  • 開催報告:平成27年度第3回 
    「痛みとうまく付き合うために」

開催日:2015年9月15日(火)
開催場所:
当院本館6階第2会議室

がん患者さんにとっての「痛み」は「気持ちのつらさ」を伴うことがあります。その痛みや気持ちのつらさを和らげることを目標に活動しているのが緩和ケアチーム(入院患者対象。通院患者は「緩和医療・緩和ケア外来」が担当)です。痛みを専門とする医師や看護師、薬剤師、ソーシャルワーカーが力を合わせて、患者さんやその家族をサポートしています。今回は緩和ケアチームの看護師が、患者さんが痛みとうまく付き合うための方法を紹介しました。

講師:
武石葉月(緩和ケアチーム看護師)
志賀圭子(保健師・介護支援専門員)
鈴木豊(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)

なぜ痛みがあるのでしょうか。主な原因として、がん自体が身体の組織や神経を刺激することで現れる痛みと、がんの治療(手術、化学療法、放射線治療など)で組織や神経が傷を負うことで現れる痛みがあります。痛みがあると、眠れない、食欲がない、気持ちがイライラするなど生活に支障が出てくるだけでなく、痛くて必要な治療ができないなど、がんの治療にも影響を与えることになります。ですから、痛みに困ったらまず主治医や看護師に相談してください。そのことで、医療スタッフも患者さんをより理解できることにつながります。



診察時間の範囲では、痛みについて医師や看護師に伝えきれないという患者さんは少なくありません。そのためにまず痛みについて「痛みのある場所」「いつから痛みがあるのか」「1日の中で痛みの強さに変動はあるか」などの記録を付けておきましょう。また、すでに痛みに対する薬物治療を行っている場合、「使用している薬は効いているか」についても記録しましょう。診察時にこの記録を医師や看護師に伝えるか、記録自体を渡すことにより、くわしい痛みの内容を医師や看護師が把握でき、症状を和らげるための薬の処方などが行えます。ちなみに、当院では痛みの治療を行っている患者さんに、下記のような「痛み治療の記録ノート」をお配りしています。ご希望の方はお気軽に医師や看護師にお申し出ください。



がんの痛みに使用する薬は大きく3つに分かれ、これらをうまく組み合わせて痛みの治療を行います。「消炎鎮痛薬」は痛みを起こす物質の働きを抑えて痛みを和らげるもの。「医療用麻薬」は痛みを伝える神経に作用して痛みを感じにくくします。「鎮痛補助薬」はこれら2つの薬では効果が十分でない場合にプラスして使用します。医療用麻薬は“麻薬”というイメージから、使うことを不安に感じる患者さんは少なくありません。たとえば「中毒になってしまうのではないか」という疑問がありますが、医師の指示を守って正しく使用すれば中毒にはなりません。「早くから使い始めて問題はないのか」については、痛みの強さに応じて処方されるので、身体に悪い影響を与えることはありません。「徐々に効かなくなるのではないか」については、効かなくなることはありませんが、痛みが強くなって薬の量が増える場合はあります。医療用麻薬は医師の処方通りに使用すれば安全な薬です。不安があったら、遠慮なく医師や看護師に聞いてください。





  • 開催報告:平成27年度第2回 
    「看護師が教える日常生活の口腔ケア
     ~毎日できる口腔ケアと嚥下訓練」

開催日:2015年7月14日(火)
開催場所:
当院本館6階第2会議室

抗がん剤や放射線などのがん治療は様々な副作用を伴う場合があり、口腔内(口の中)での副作用には口腔粘膜炎(口内炎)や口腔乾燥(口の中が乾く)などがあります。これらが悪化すると痛みのために話すことや飲食が困難になったり、感染症にかかりやすくなります。がんの治療を始める前から口腔ケアを実践することが、こうした症状を防ぐのに最も効果があると言われています。そこで今回は、毎日実践したい口腔ケアと嚥下訓練について看護師がご説明しました。

講師:
宮崎留美子(摂食・嚥下障害看護認定看護師)
志賀圭子(保健師・介護支援専門員)
小川絢多(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)
鈴木豊(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)

実際の口腔ケアのお話の前に「唾液」の大切さについてご説明します。唾液は1日あたり約1~1.5リットル分泌されており、口の中の食べかすや歯垢を洗い流したり、唾液に含まれる抗菌成分が口の中の細菌の増殖を抑えて、口腔粘膜炎や感染症を防ぐ役割を果たしています。しかし、がん治療の副作用などによって唾液腺の機能が衰えて唾液の分泌が少なくなり、その役割が果たしにくくなってしまいます。「話しにくい」、「口臭が気になる」、「口の中がヒリヒリする」などの自覚症状で気づく場合が多いので、もし気づいた場合は積極的に水分を摂取する、水やアルコールの入っていないマウスウォッシュでうがいをします。アルコールが入っているものは刺激が強く口の中が乾燥しやすいので厳禁です。



口腔ケアで最も大切なのは「歯みがき」です。普通は毎食後、1日3回と言われていますが、それに「就寝前」と「起床後」を加えて1日5回行いましょう。就寝中は唾液の分泌が少なくなるので、口の中は乾燥し細菌が増殖しています。そこで、できるだけ細菌が増殖しないように就寝前に細菌をできるだけ除去しておく、また、就寝中に増殖した細菌を起き抜けの歯磨きで除去する。これは嚥下機能が衰えた人には特に必要な習慣です。増殖した細菌を残したまま朝食を食べて、万が一、誤嚥(誤って食べ物が気管に入ってしまうこと)してしまい肺炎を起こす危険性があるからです。なお、下の図で嚥下機能を回復する「嚥下体操」を紹介していますので、参考になさってください。



次に正しい歯みがきの方法についてご説明します。歯ブラシは垂直に立てて歯1本1本、歯間1つ1つていねいに磨きます。歯ブラシはブラシ部分が小さく柔らかいもので、柄の部分は真っ直ぐなものを選び、1カ月に1本必ず交換します。歯みがき粉は口腔粘膜炎などを悪化させる危険性があるので「低刺激」のものを選ぶようにしましょう。歯みがきが終わったら口の中の壁や歯とくちびるの間、舌の上など粘膜も軽くマッサージします。全体で5分間磨くのが理想的です。入れ歯は歯と同様に歯ブラシでブラッシングしますが、歯みがき粉は使わないようにします。磨いた後に洗浄剤に浸けておきます。以上のように口の中の乾燥を防ぐこと、正しい歯みがきで口の中を清潔に保つことで、できるだけ快適な生活を送りましょう。





  • 開催報告:平成27年度第1回 
    「がん治療とリハビリテーション
     ~日常生活で活用できる運動とストレッチ」

開催日:2015年5月12日(火)
開催場所:
当院本館6階第2会議室

がんの手術などを受けた後、回復期に入ったので、立ち上がって歩こうとすると力が入らなかったり、つまずきかけたりする方が多くいらっしゃいます。手術などの治療で体力が衰えてしまったのが原因です。それを無理して歩くと疲れてしまったり転んで思わぬケガをしてしまいます。そこで、平成27年度第1回目の「新宿deがんサロン『とぽす』」では、当院リハビリセンターセンター作業療法士が、体を慣らし筋力をよみがえらせるため簡単な運動とストレッチ「リハビリ体操」をご紹介しました。

講師:
太田とし江(リハビリテーションセンター・作業療法士)
志賀圭子(保健師・介護支援専門員)
小川絢太(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)
鈴木豊(がん相談窓口・医療ソーシャルワーカー)

背もたれのある椅子を用意してください。まず、しっかり歩くための準備体操をご紹介します。1つ目は座ったままで両足の爪先を揃えたままでかかとを上げて3秒間そのままの姿勢を保ち下ろす。この動作を20~30回繰り返します。これは歩く時に転ばないように爪先を上げる練習になります。2つ目のストレッチも座ったままで両手を上に上げて、背もたれに体重をかけるようにして体を後ろに反らすストレッチです。これは寝ていた期間にこわばってしまった腹筋や背筋を伸ばして柔らかくするストレッチです。お好きな回数行ってください。しかし、早く筋力や運動機能を回復させようと無理するのは厳禁です。



3つ目からは椅子の背もたれのうしろ側に立って行います。背もたれを両手でつかみ、両足で爪先立ちをします。足首をしっかり伸ばしましょう。そのままの姿勢で3秒間。終わったらゆっくりかかとを下ろします。この動作を20~30回行います。4つ目は片手で背もたれをつかみ、同じ側の足をうしろに曲げてふくらはぎか足首をつかみます。これは太腿の筋肉のストレッチです。3秒間そのままの状態で、終わったらもう片方の足を。5つ目は両手で背もたれをつかみ、片足を前にもう一方の足をうしろに伸ばし、うしろの足首のアキレス腱を伸ばすストレッチです。ここを伸ばすことで歩いた時の痛みやつっぱり感が少しずつ取れていきます。そのままの状態で3秒間。終わったらもう片方の足を。どちらもお好きな回数行ってください。



6つ目は両手で背もたれをつかみ、かかとをつけたままゆっくりとしゃがみます。かかとがつかない場合は無理をしないで上げたままでけっこうです。しゃがんだままで3秒間。それからゆっくり立ち上がる。これを20~30回繰り返します。これを毎日行っていくうちに血流が促進されて体が温まる。そうするとますます筋肉がほぐれて体が動きやすくなる。とてもいい循環です。そうした中で歩き始めると、非常にスムーズに歩けるようになり、歩くうちにさらに足腰の筋肉がついてくるはずです。



次に上半身のリハビリ体操です。椅子に座ってください。片方の腕を伸ばしたまま前方に上げ、もう片方の腕で下から支え手前に引き寄せます。3秒間そのままの姿勢を保ち、もう片方。このストレッチで腕の筋肉と背中の肩甲骨あたりの筋肉が伸びます。その次に行うのは指の体操です。両腕を前に伸ばして片方の手の指先を上にします。もう片方の手で指先を持ちゆっくりと反らせて3秒間。反対の手で3秒間。これら腕と手のストレッチはお好きな回数行ってください。人間の関節や筋肉は曲がる方向ばかりを使うので、その反対の筋肉は衰えがちです。その筋肉を使うことで治療でこわばった上半身や手をリラックスさせます。これらの体操はみな入院中でも自宅療養中でも簡単にできる運動です。あくまで無理のない範囲で行い、毎日続けることが大切です。





問い合わせ先:
東京医科大学病院 総合相談・支援センター
がん相談窓口 医療ソーシャルワーカー 保健師
TEL:03-3342-6111(代表)
※がん患者サロン「とぽす」のチラシの詳細は、PDF形式でご覧になれます。
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