東京医科大学病院




乳がんにおける薬物療法

乳がんは薬がよく効くがんとして知られています。数多くの薬が開発されており、治療の目的や乳がんの性質によって使用する薬が異なります。薬物療法には、化学療法、ホルモン療法、分子標的療法があり、術前・術後によって内容が分かれます。


1.術前薬物療法

大きなしこりを小さくするためだけでなく、最近では、ごく小さな転移を根絶するために、手術の前に薬物療法を行うようになってきました。また、「大きなしこり(がん)を小さくして乳房温存術を行う」、「使用した薬の効果が確認でき、術後の治療方針決定に反映できる」、という点でも期待できます。


2.化学療法

抗がん剤を使って治療する方法です。乳がんの化学療法は、1種類の抗がん剤を使うだけではなく、作用の異なる抗がん剤2~3種類を同時にあるいは順次投与する多剤併用療法が一般的です。


多剤併用療法に使用する抗がん剤の頭文字と名称

頭文字(略記号) 薬剤名
A(ADM) ドキソルビシン(別名:アドリアマイシン)
C(CPA) シクロホスファミド
E(EPI) エピルビシン
F(5-FU) フルオロウラシル
M(MTX) メトトレキサート
T(PTX、MDX) タキサン系薬剤(パクリタキセル、ドセタキセル)

よく行われる治療は、CMF、CAF、FEC、AC、EC療法などです。副作用が比較的軽い内服の抗がん剤も使用され、効果が認められています。


投薬スケジュール


3.ホルモン療法

ホルモン療法とは、女性ホルモンであるエストロゲンを取り込んで増殖するタイプの乳がんに対して、エストロゲンを薬でコントロールして、がんの増殖を抑える療法です。閉経前と閉経後では、体内でエストロゲンが産生される経路が異なるため、使用する薬剤も別々のものを使用します。また、このタイプの乳がんはエストロゲンの産生を抑えることができれば再発の抑制が期待できるため、長期にわたり(通常5年以上)治療を継続します。

4.分子標的療法

がん細胞に特徴的または過剰にあらわれる特定のタンパク質や分子を薬でねらい撃ちする治療法です。この療法には、がん細胞に対する選択性が高い、従来の抗がん剤に比べ毒性が低い、がん細胞の増殖抑制作用がある、などの特徴があります。乳がんの場合、HER2というタンパク質が陽性の乳がんに対してHER2を標的とするトラスツヅマブ、ランマーク、ペルツズマブがあり、血管新生因子(VEGF)に対するベバシズマブ、さらに骨転移に対するデノスマブがあります。