東京医科大学病院




大腸がんにおける手術療法

1.開腹手術

大腸がんによる手術療法では、主に腸管の切除とリンパ節郭清(がんが発生している周辺のリンパ節を取り除くこと)を行います。リンパ節を取り除く範囲は、がんが発生している場所とその進行の度合いによって決定されます。がんが発生した腸管を取り除いた後は、残った腸管をつなぐという処置を行います。がんが肛門に近く、腸管がつなげない場合には人工肛門を造設します。

●結腸切除術とリンパ節郭清

大腸のほとんどを占める結腸は盲腸、上行結腸、横行結腸、下行結腸、S状結腸に区分されています。結腸の切除とリンパ節郭清を同時に行う場合、リンパ節を取り除く範囲は大きく3種類に分けられています。

リンパ節郭清

D1郭清: 腸管の最も近くに接しているリンパ節を切除
D2郭清: 腸管の栄養血管に隣接している中間リンパ節を切除
D3郭清: 栄養血管の元にある主リンパ節を切除

●直腸局所切除術

大腸の直腸部分においての早期のがんはリンパ節郭清を行わず、発生している部分のみ切除する場合があります。これらは肛門から手術する「経肛門的切除」とお尻の仙骨から肛門にかけて5cmほど切る「経仙骨的切除」により行われます。経仙骨的切除では直腸周辺のリンパ節をある程度取り除くことができます。現在は内視鏡による切除が進んでいるため、行われていません。

経肛門的切除

経仙骨的切除


●前方切除術

がんが直腸のS状部・上部・下部にある場合に行われる術式で、回復して腹部前方からがんを取り除きます。直腸の肛門側を2〜3cm残せるので、肛門を温存することができます。肛門に近いところを手術するため、残された直腸と結腸は自動吻合(ふんごう)器という器械によってつなぎます。

前方切除術

●直腸切除術と人工肛門の造設

がんが直腸の肛門部にまで及んでいた場合は、直腸全体とS状結腸を取り除くことになります。その際には肛門を失いますので、腹部に人工肛門をつくり、そこから便を出すようします。人工肛門の造設は手術中に行われ、回復後に患者さんが管理しやすい場所につくります。

直腸切除術と人工肛門の造設


2.腹腔鏡下手術

開腹せずに腹腔鏡によって行う手術全般のことを腹腔鏡下手術といいます。炭酸ガスを腹部に入れて膨らませ内部空間を確保した後に数カ所に穴を開け、そこから小型カメラや手術用器具を入れて行う手術です。大腸がんの場合、ガイドラインではステージⅠの段階で行うことが推奨されます。しかし、欧米での成績結果もあり、進行がんでも多くの施設で行っています。

腹腔鏡下手術

手術による傷が小さいので、術後の疼痛は開腹の場合よりも軽減されます。回復も早く、早期退院が可能ですが、一方で手術時間が長い、医療費が高いといった点があります。腹腔鏡下手術については、どのような段階で行われるのか、長所、短所などの説明をよく聞いた上で選択してください。


3.内視鏡手術

大腸検査で使用される内視鏡による手術で、大きさが2cm未満のリンパ節転移の可能性がない早期がんにおいて行われます。日帰りでの治療も可能なため患者さんの負担が軽く、行われる件数が多くなりました。しかし、切除した細胞の検査結果によっては、外科的手術が必要になる場合があります。ただし、2cm以上の場合は、入院での治療となります。
内視鏡手術には、茎を持ったポリープに行われる「ポリペクトミー」と平たい腫瘍に行われる「EMR(粘膜切除術)」があります。また、最近では、平たい2cm以上の大きい腫瘍に対しては、「ESD(粘膜下層剥離術)」も行っています。

●ポリペクトミー

スネアという金属性のワイヤーをポリープの茎の部分にかけ、高周波による電流で焼き切るという方法です。

ポリペクトミー

●EMR(粘膜切除術)

上皮と筋層の間にある粘膜下層に生理食塩水を注射して平たい腫瘍を持ち上げた後、高周波による電流で焼き切ります。

EMR(粘膜切除術)