東京医科大学病院




胃がんにおける手術療法

1. 開腹手術

胃がんにおける手術療法では、胃切除術とリンパ節郭清(がんが発生している周辺のリンパ節を取り除くこと)を基本とした開腹手術を行います。早期胃がんに対しては病巣の場所と大きさによって、「胃全摘」、「噴門(胃入口)側胃切除」、「幽門側胃切除」の3つの中から選択されます。

●胃全摘

胃につながっている食道と十二指腸の一部を残し、胃すべてを切除する方法です。胃を全摘した後には、食道と小腸をつないで十二指腸を閉じる「ルーワイ法」と呼ばれる再建術が行われます。

胃全摘

●噴門側胃切除

胃の入口に当たる噴門から2cm以内に病変があり、腫瘍の大きさが小さく反対側の胃を半分くらい残せる場合に用いられる術式です。胃の半分が残されるとビタミン吸収を促進するキャッスル内因子や胃酸を分泌する機能を温存することができます。

噴門側胃切除

●幽門側胃切除

食道に近い胃の3分の1から5分の1を残す手術です。再建術としては、残った胃と十二指腸をつなぐ「ビルロートⅠ法」と残った胃と小腸をつなぐ「ビルロートⅡ法」があります。残す胃が4分の1以下となると内容物の食道への逆流への対応を考える必要が出てきます。

幽門側胃切除


2. 腹腔鏡下手術

開腹せずに腹腔鏡によって行う手術全般のことを腹腔鏡下手術といいます。炭酸ガスを腹部に入れて膨らませ内部空間を確保した後に5カ所穴を開け、そこから小型カメラや手術用器具を入れて行う手術です。

腹腔鏡下手術


腹腔鏡下手術は手術による切開部が5〜6cmと小さいため、運動能力の低下が従来の開腹手術よりも少なく、術後疼痛は開腹のそれと比べて軽減されます。また、出血量や術後の臓器癒着の点からも有用であるといわれています。しかし、手技の習熟に時間がかかること、手術の過程において合併症が増加すること、再建術における自由度と安全度に限界があることなどが、今後の課題として挙げられています。


3. 内視鏡手術

早期胃がんにおける内視鏡手術は、臓器機能の温存や根治性を目的とした低侵襲治療としてさかんに行われています。高齢の患者さんでも短い入院期間で行うことができるため、がん治療における手術のイメージを大きく変えました。技術的な進歩、論理的根拠の確立などにより、さらなる活用の拡大が期待されています。内視鏡手術の適応を満たした早期がんに対して行われ、具体的には、EMR(粘膜切除術)、ESD(粘膜下層剥離術)といった治療が広く行われています。

●EMR(粘膜切除術)

EMR(粘膜切除術)

EMRは内視鏡を用いて粘膜に発生した腫瘍部を粘膜下層から切除する方法で、筋層より下の組織には障害を与えない術式です。隆起した腫瘍はワイヤーを用いて高周波電流により焼き切りますが、平らな腫瘍に対しては粘膜下層に生理食塩水を注入し、腫瘍部位を隆起させて焼き切ります。粘膜下層への生理食塩水の注入は筋層と粘膜下層の間を引き離す効果があるので、胃に穴を開けることを防ぐことができます。一度に切除する腫瘍の大きさが2cmくらいまでの場合に行われています。

●ESD(粘膜下層剥離術)

EMR(粘膜切除術)

ESDは内視鏡を用いて腫瘍を粘膜下層から剥がし取る方法で、平坦な腫瘍や大きさが2cm以上の腫瘍の場合に用いられる術式ですが、現在はほとんどの症例に対してESDを行っています。腫瘍部位を確実に切除するために、最初に腫瘍の周囲にアルゴンプラズマ凝固あるいは電気メスによるマーキングを行います。次に粘膜下層に生理食塩水を注入し、腫瘍部位を隆起させます。マーキングした場所を取り残さないように、隆起した腫瘍部位を全周囲的に切っていきます。周囲の切開終了後に、粘膜下層から腫瘍を剥がし取っていきます。